メンチカツが食べたい病の治療はせんべろで。

ああ・・・・・・。
メンチカツ食べたい。
ビールと一緒にきゅうっとしたい。

という発作が生じた秋の仕事帰り。

コンビニで、缶ビール買ってメンチカツ買えばいいじゃないか。
という声も聞こえて来そうだ。

でも、違うのだ。
揚げたてのメンチと、サーバーから注がれた生ビールがいいのだ。
子供じみたわがままなのか、大人だから許される贅沢なわがままなのか。

その発作を治すために考えついたのは、「せんべろへ行く」であった。
せんべろであれば、手軽にメンチカツとビールが楽しめるはずだ。

その日は、田町付近にいた。

よし、いよいよ、あのお店におひとりさまデビューすべき日がやって来たか。

と向かったのは、慶応仲通り商店街である。
サラリーマンの街らしく、様々な飲食店がひしめき合っているのだ。

中でも、以前から気になっていたお店が「一心」。
夕方にお店を除くと、サラリーマン達がお酒を飲みながら憩う様子が印象的なせんべろのお店だったのだ。

しかし、女子率は低い。
なかなか入りづらいと思っていた。

この日は、花金ということもあってか、せんべろに行くサラリーマンは少ないと見え、比較的お店に入りやすそうな雰囲気。

よっしゃ。

意を決して店へと入る。

せんべろの魅力は何と言っても安いこと。
しかし、店員さんの接客はテキパキしていて、ドライなケースが多い。
ましてや、レストランのように店員さんからオーダーを取りに来てくれるわけでもなく、こちらが、オーダーを彼らに言わなきゃいけないシステムが大半だ。

彼らは、お客さんに安く美味しくお酒と料理を楽しんでもらうことだけに集中しているのだ。

間違っても、にこやかな対応や、細やかすぎる心遣いなどというものは期待してはいけない。

こちらも、酒と料理を楽しむだけにやってきたのだから。

と言っても、会長。
せんべろへ、ひとりで行くのに慣れているわけではない。

まずは、メニューに目を通し、頼むものを決めておく。

そして、周りのお客さんの様子を伺う。

と、隣の新聞読んでいるおじさまが、注文する声が聞こえた。

「中おかわり」

図太い声のトーン。
落ち着いた感じではあるものの、はっきりと店員さんに聞こえるくらいのボリューム。

おし。
このくらいの感じでいけばいいのね。

おじさまに習って、会長も落ち着いた雰囲気を出しつつ、
「生ビールとメンチカツください」
と店員さんが何となくこちらを向いているような瞬間に滑舌よく注文してみた。

店員さんもそれに応じて答える。
「はい、生一つにメンチ一つ〜」

ふう、良かった。
無事、オーダーが通ったようだ。

きっと、隣の新聞読んでいるおじさまだったら、
「生とメンチ」の6文字でオーダーできるに違いない。

しかし、会長は若輩者。
今のとこは
「生ビールとメンチカツください」の15文字でオーダーするので精一杯。

この無事にコミュニケーションが図れただけでも、安心すべきことであったのだ。

そして、待ちに待った、メンチカツ。

はいよ、とテーブルに置かれる。

きゃっほう。

ビールで喉を潤し、メンチを口に放り込む。

軽い衣に熱々のミンチ肉。
これよ、求めていたのは。

せんべろに入って正解だったと確信した会長。

勢いづいて、めっちゃ食べることになる。
「もろきゅう」、「ホッキ貝刺」、「つくね」に「ラビオリ」。

ラビオリ、飲み好き会長にとっていつも気になっちゃう存在でもある。
名前はオシャレなのに、大衆酒場っぽいとこやせんべろでメニューに載っているあたりが不思議ちゃん的おつまみなのだ。

パスタのような生地の中に肉が入っており、揚げてある食べ物。
まるで、洋風のミニ揚げ餃子のようだ。

いっぱい入っていて、腹持ちもいいし、長い時間つまめるおつまみなので、秀逸。

そして、メニューの端にあって、気になっていた、日本酒も注文。

ひやおろしを取り揃えているあたりに、お店の方が日本酒が結構お好きなのでは、とお察しした。

心なしか、日本酒の注文をした時は、大将らしき方が少し嬉しそうにされているような気もしたのだ。
(思い込みの激しい、ちょっと痛めのアラサー女子。)

お腹いっぱい、お財布にも優しいおつまみとお酒を楽しんだこの日。

また、がっつり食べて飲みたい時は、せんべろに限りますな。

と、すっかり、こちらの店のファンになった会長なのであった。

一心
東京都港区芝 5-24-11
03-5232-2343

「メンチカツ女子。」