ローカル線の優しいクラフトビール専門店。

鵜の木に行くのも初めてであるが、多摩川線に乗ること自体も初めて。
駅に降り立ち、そのローカルな雰囲気に圧倒される。
ああ。
何だろう。
この感じ。懐かしい。
学生時代には、大井町線沿いに暮らしていたこともあったので、ローカル線の雰囲気に親しみを持っている。
駅を降りると、すぐ見える踏切からカンカンカンと響く警報音。
周りには、空を遮ることのない高さの店舗や住居。
スーパーの袋を持って忙しそうに自転車を漕ぐ人の様子。

その平和な様子と、未知な地に足を踏み入れた自身の少し興奮している気持ちとのギャップに、ぎゅっと胸が締め付けられるような気分になった。

線路沿いを歩いて、すぐ店が見えてきた。

L字型のスタンディングテーブル。
店主の方が一人で接客しているようだ。

店内へ入る。
先客は二名いらした。
常連さんのようであるが、お二方とも一人客としてきていたようだ。

メニューに目をやると、見たことのない銘柄のビールが5種類並んでいる。

全てタップで、メニューにないビールについては缶やビールで置いてあるらしい。


どれもインパクトのあるネーミング。
特に気になった富山県のクラフトビール「ゾウとネズミ」をまずは飲むことに。
穏やかな味わいで飲みやすい。

2杯目は女性にオススメらしい北海道のクラフトビール「ハシカプ」。

酸味が強くて、ジューシー。
見た目もルビー色で可愛らしい。

3杯目は、新しく出してくれたタップの京都のクラフトビール「春夏秋冬」。

酸味があるけど、フルーティーな感じではなく、独特な味わいであった。

店主と思しき優しそうなお兄さんが声をかけてくれる。
「ビールはよく飲まれるのですか?」

「あ、まあ好きなんですけど、あまり詳しくなくて。でも、こちらに置いてあるビールは全て見たことない銘柄でびっくりしました」

「そうなんですよ、あまり大きくないブリュワリーのものも置いてあって。今飲まれている、こちらの『ゾウとネズミ』も一般流通できないくらい小さいブリュワリーが作っているビールなんですが、知人の紹介で仕入れたんですよ」

と、お兄さん。
その他の銘柄についても先客の常連さんとともに丁寧に説明してくださる。
お店に置いてあるタップのビールは基本的に国産にしてあり、ビンや缶は海外のものを取り揃えているそうな。

お兄さん、実は元々栃木のブリューワリーで働いていた。
だから、こんなにビールに詳しいのだ。

と頭の中に、良からぬ質問がよぎる会長。
一瞬、聞くのを躊躇するも結局尋ねてまう。

「ビールって簡単に作れるんですかね?ビールを自宅で作れるキットっていうのがあるらしいので」

うーん、と悩ましげな顔をするお兄さん。
「まあービールは簡単に作れるんですけど、アルコール度数1%未満じゃないと酒税法には引っかかってしまいますよね」

と仕事休みの合間を縫っていらしていた先客のお姉さんも話題に乗ってくれる。
「たしかに作るのは簡単そうだよね。だってさ、ウォーキング・デッドっていう海外ドラマでビール作ってるシーンあったもん。ゾンビだらけの物資少ない街で作れるくらいだから、簡単には作れるんじゃないかなあ。味を美味しくするのは難しいだろうけど。」

「ていうか、鬼気迫る状況でビール作ってるなよ、危機感持てよって話もあるよね」と笑う、もう一方の先客の男性。

たしかに。
きっとゾンビ疲れで、ビールでも飲んでないとマトモにいられなかったのであろう。
酒は偉大なのか何なのか。

冗談で、お店でもビールを造ってみるかとなるも、ガラス張りの中丸見え状態で、しかも電車も店の目の前通っているし、匂いもすごそうだし、と違法行為がバレないわけがないため、当たり前のように却下となった。

楽しく話していると時間が経つのも早いものだ。
立ち飲みスタイルだけども、疲れることなく滞在時間が1時間を過ぎていた。
ビールだけのお店で、これはすごいことな気がするぞ。

みなさんの新参者を温かく受け入れてくれる優しさに感謝感謝。
また、ぷらっと寄りたくなるピースフルなお店なのであった。

BEER STAND Stoop(ビアスタンドストゥープ)
東京都大田区鵜の木2-12-1ナガトハウス102
050-7122-2615

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「手作りビールキット缶。」


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