浜松町。
30才を過ぎるまで足を運んだことがない駅であった。
が、今の会社に転職してから、仕事上行くことも増え、気づけば、その駅の魅力に気づくようになっていった。
そう、実は浜松町、サラリーマンには嬉しい飲み屋さんがけっこうあったりするのだ。
最近、飲みの開拓をし始めた中でも、お気に入りになりつつお店。
「日本酒 室 MURO」である。
店員さんは女性だけなのだろうか。
今のとこ、男性店員を見たことがない。
行けば、大半がおひとり様の日本酒スタンディングバルだ。
北陸を中心とした日本酒が多数あり、それに合う肴がたくさんある。
おしゃれな内観で落ち着く雰囲気。
この日は、しっとり、日本酒を楽しんでいた。
気配りのある女性店員さんばかり。
なので、お一人で来ている女性客にも気さくに話かかけてくれる。
と、女性店員さんからお声がかかる。
「日本酒、お好きなんですね。実は今日、蔵元の方いらしているんですよ」
なぬ。
カウンターの一つ隣にいた、美しいメガネの女性。
なんと、北陸にある某蔵元社長の奥さまだそうな。
しかも、ここ数年で、びっくりするほど美味しい日本酒ランキング上位に入っていた蔵元さんであった。
こんな出会い。
お話せずにはいられない。
「先日、そちらの、『うすにごり』をお寿司屋さんで飲んで感動したんです」
なんて、ファン丸出しのお声がけをしてしまった。
なお、「うすにごり」とは、醪の白濁した部分が少し残った日本酒のことである。
日本酒造りの最終工程では、蔵人が丹念に造った醪を袋で濾して、酒粕と分離させることで出来上がる。
目の粗い袋で濾せば、酒粕成分が少し残った日本酒となる。
その成分の割合が薄く残った日本酒が「うすにごり」である。
こちらの蔵元のうすにごり、甘さと酸味と旨味のバランスがとても良い感じで、またあればお店にあれば飲みたいなーと長いこと思っていたお酒なのである。
こんな、ガツガツした会長にも優しく対応してくれる女性。
「ありがとうございます。小さい蔵なのですが、そうおっしゃっていただけてうれしいです」
「いいなあ。美味しい日本酒と毎日生活できるなんて」
「うふふ」
上品な笑顔。
「旦那さんとは、どこでお知り合いになったんですか?」
思わず、単刀直入な質問をしてしまう。
「実は東京農業大学の同期だったんですよ、ふふふ」
ひゃあ、これまた感動。日本酒好きになってしまうと、通いたくなってしまうくらい、業界では有名な大学だ。
いいなあ。
憧れの女性と出会えて、ポワンとしてしまう。
あ、でも待てよ。
早起き大の苦手な自分には蔵元には嫁げ得ないな。
なんて現実的なことを思っていると、新たな男性のお客様二人組みが現れる。
なんと、こちらのお二人組、一人は某大手ビールメーカー社員、もうお一人は某ワイナリーの部長さん。
お酒のプロが、こんなに自然と集まるの場に出くわすのは初めてのこと。
ん、でも、ビールメーカーの人は他のお酒も飲んで会社が許してくれるのだろうか。
「確かに、ビールは自分のとこの飲むことが多いですけね。でも、こんなに日本酒飲んでるビールメーカー社員は僕くらいだと思います」
なんて、言ってておもしろかった。
隣で飲んでいたサラリーマンのおじさま、実は、その部長さんのワイナリー見学を先日して来たばかりだそうで、二人してちょっとした興奮をしていた。
日本酒、ワイン、ビール会社のプロが集まる場。
とても貴重な体験をした夜であった。
「日本酒 室 MURO」
〒105-0013
東京都港区浜松町2-8-10
03-6432-0408