新しい扉を開いた日、女ひとり酒場放浪記。

焼肉屋のおじさまにおススメされた居酒屋を嬉々として目指す会長。
ネオン街と化す夜の大森がさらに輝いて見える。

女性ひとりでも入りやすい日本酒いっぱいの煮込みのお店。
どんな感じなんだろう。

路地を入る。
女性一人でも入りやすいお店がぱっと見た感じどこかわからない。

待てよ・・・・・・。

たしかに、煮込み推しな大衆酒場が見える。
「蔦八」とある。

こ、これだ。

待って、おじさん。
たしかに、さっき女一人で焼肉しちゃってたけど、まだ、大衆酒場一人デビューはしてないよう。
てか、こんな感じの酒場にフワンといきそうな雰囲気出してたっけ、私?

上級者風の居酒屋感に圧倒されて、店の前をうろうろする会長。

頭の中では、焼肉屋のおじさんの言葉「珍しい日本酒もあるんやで」がコダマする。

しかし、店を覗くとおひとりさまのおじさんか、サラリーマンの団体か、といった雰囲気だ。
一人の女性は見当たらない。

どうしよう。

と、張り紙が目に止まる

「お一人様・女性大歓迎」とある。

ん、行けるか、行けるのか。

「お一人様の女性」、ではなく、あくまで「お一人様・女性」であるのが気になるとこではあるが・・・・・・。

背後に気配を感じる。
うろうろしている会長のせいで、店内には入れずにいるお一人様男性のお客さんだ。

もう、いいや、入っちゃえ。

おもむろに扉を開いた。

店員さんが禁煙か喫煙かの希望を聞いてくれる。
禁煙と答えると、コの字のカウンター席の奥の方に通してくださった。

席に着く。
目の前には大きな煮込み鍋。

この頃には入店前のソワソワ感が消えていた。

むしろ、あの煮込みが食べられるのが楽しみで仕方ない。

テンション上がりつつ、メニューに目をやる。

ひゃあ、嬉しい銘柄の日本酒が揃っている。

入店したからには、楽しむまでだ。

小の煮込み、卵付きと「みむろ杉」を注文。

まずは、お通しに出てきた、カレー風味のもやしと枝豆を堪能しつつ、日本酒をちびちび飲む。

そして、やってきた煮込み。

口にしてびっくり。
人生で出会った煮込みランキングTOP3に間違いなくランクインする美味しさだ。
きちんと脂も乗っていて、ジューシー。
程よい甘みで、コク豊かな旨さがある。

隣に座る映像作家っぽい二人組の話を盗み聞きしたところ、長年煮込みのタレは付け足し付け足しで作られているそうな。

へえー。

嬉しさのあまり、日本酒をスルスルと飲んでいると、隣に座っていたカップルの男性に話しかけられる。

「お姉さん、いい飲みっぷりですねぇ」

「はあ、日本酒が大好きでして・・・・・・」

照れつつ、答える会長。

「実は彼女も日本酒大好きなんですよ。オススメをよかったら、紹介してあげてくれませんか?」

というわけで、彼女さんにお好みの味を聞く会長。

彼女さん曰く、「結構キリッとしてるけど、旨味があるのが好きなんです」だそうな。
飲み慣れている感じが伺える。

会長がオススメしたのは秋田の地酒、「刈穂」。
スッキリしているけども、米の旨味があって、美味しい日本酒なのだ。

彼女さんも彼氏さんも味を気に入ってくれたみたいで、嬉しかった。

その後、優しいカップルのおかげで日本酒話に花が咲いた。
お二人はもともと、社会人になってから通い始めた大学講座で知り合ったそうな。
実は、彼氏さんは、そこまで日本酒が得意ではないそう。
しかし、彼女さんに合わせて、いろいろな酒場に付き合ってくれるらしい。
なんだか、ほんわかするお話だ。

気づけば、結構な長い時間3人で話を楽しんでした。
最終的には、彼氏さんに勧められて、日本酒好きな彼女さんと連絡先を交換する流れに。

スマホ見て、会長も彼女さんもピンクゴールドのiPhoneで、親近感がますます湧いた。

記念すべき大衆酒場おひとり様デビューの日。

こんなに美味しくて安くて楽しくて癒される時間過ごせるなら、早めにデビューしとけばよかった。
なんてことさえ思う良い日になったとさ。

煮込み 蔦八
〒143-0016
東京都大田区大森北1-35-8
03-3761-4310