月島といえば、もんじゃ焼きの聖地。
何と店舗数は70件以上にも及ぶ。
もんじゃ好きにはたまらない街だ。
が、この日、会長が目指したのは、もんじゃではない。
「つねまつ久蔵商店」だ。
島根の地酒を中心とした日本酒が揃っている。
日本酒好きの会長にはたまらない。
店の前に到着。
ん、デジャヴだろうか。
きたことあるような気がする。
そうか。
いつか、ポールに連れてきてもらった店だ。
ポールとはあだ名で、本人の了承を得ずに勝手に呼んでいる。
(しかも、本人のいない場所で。)
姉の友人なのだが、ポールの会社に働いているという理由だけで、「ポール」というあだ名がつけられた飲み好きの男性だ。
生粋の日本人である。
ちなみに、その日は、1軒目でワインを飲みすぎてグロッキーになり、結局、ほとんど飲めないまま帰った記憶がある。
今日は楽しむぞ。
と、小さな決意をして入店する。
メニューには美味しそうな肴がずらり。
何だか、お肉を欲していたので、「ふわとろ鳥皮煮込み」2本、「牛すじネギ塩ぽん酢」を注文。
お酒はせっかくなので、島根のものを。
飲んだことのない「ヤマサン正宗」を注文。
濃厚な旨味でバランスのとれたちょっぴりの酸味、苦味を感じるユニークなお酒であった。
鳥皮煮込み。
まろやかなタレにゆずの香りが効いている。
美味しい。
たしかに、ふわとろだ。
2本頼んだはずなのに、瞬時になくなってしまった。
その後のお楽しみもある。
バケットである。
残ったタレにつけて食べるのだ。
「切れ端だったので、サービスでおつけしました」
本当は2枚だけだったはずが、3枚になり、得した気分。
優しそうな店員のお姉さんに声をかけられる。
「いい飲みっぷりですね。日本酒お好きなんですか?」
バケット頬張りつつ、照れながら答える。
「ええ、すごく好きで。こちらのお店、島根の地酒がそろってたのが、気になっていまして。あ、『渦』ください」
こちらの「渦」、酒米が「佐香錦」とある。
日本酒初心者の方のために「酒米」について説明しよう。
日本酒の原材料は基本的に、米と水である。
米というと、食米で流通している「コシヒカリ」、「秋田小町」、「ゆめぴりか」などをイメージされる方が多いのではないだろうか。
実は、米には食米以外にも「酒米」がある。
正式には、「好適酒造米」という。
一般的に、稲の背丈は高く、稲穂も長い。
また、米粒も食用のものよりも大きい。
この酒米、食米と同様に様々な品種がある。
人気があるものに、「山田錦」、「五百万石」、「雄町」、「美山錦」などがある。
しかし、今回見つけた「佐香錦」。
飲んだことがないような。
というわけで、会長にとっては物珍しい酒米。
今回は、こちらの米「佐香錦」を使った日本酒、「渦」を注文することにした。
タイミングよく届いた牛すじネギ塩ぽん酢。
届いたのを見て、思わずほころぶ。
山盛りなのだ。
さらに嬉しいことに、渦がスッキリした味わいであったため、ぽん酢とよく合う。
牛すじ、しっかりした食感だ。
これさえあれば、いくらでも飲めそうなくらい、長持ちしそうなおつまみ。
その後も、お兄さんにオススメの日本酒をお願いすることにした。
日本酒好きなのを察してくださったのか。
メニューになかったオススメのものを持ってきてくださった。
「光伸」、鎌倉で行われた和紙イベント用の特別銘柄だそうな。
本来は「美波太平洋」として市場に出回る日本酒らしいが、イベントのために、特別に仕込んだものだそう。
華やかな香りとしっかりした旨味と甘味、バランスの良い酸が、とっても美味しいお酒であった。
ふむ。
ラベルを見てみる。
と、こちらも酒米が佐香錦だ。
お兄さんに尋ねる。
「あれ、この佐香錦って島根で有名なんですか?」
「そうなんですよ、島根独自の酒米でして」
ほお、島根って、けっこう日本酒に力入れているんだなあ。
こうなってくると、通常バージョンの「美波太平洋」と飲み比べたくなってしまう。
というわけで注文。
こちらの方は、少し色味がある。
火入れをしているためか、華やかさよりも旨味が引き立つお酒。
例えるなら、紹興酒の少し、軽めにしたような味わいだ。
酒の違いを楽しんでいると、お兄さん。
「途中から燗酒にしてお飲みいただくことも可能なので、おっしゃってくださいね」
ありがたきお言葉。
というわけで、甘えて、残りを燗づけしていただいた。
燗にすると、旨味が凝縮されて、まろやかな味わいに。
いい時間を過ごしたわあ。
まるで、食後のお茶をすするかのように、燗をすすり、お店を後にした。
ごちそうさまでした。
つねまつ久蔵商店
〒104-0052
東京都中央区月島1-6-12
03-6204-9740