女一人で大井町の中華せんべろに行った話。

大井町といえば、小さな居酒屋が散在している。

とあるおじさまから聞いた話だ。
大井町駅大井町線付近はかつて赤線地帯であった。
一方、大井町線から坂を下った周辺は青線地帯だったそうな。

そういった歴史背景がある場所は個人経営のような居酒屋が密集していることが多い。
男性が女性を買っていた場所、と考えるとやるせない気持ちになるものの、
小さいお店が好きな会長としては、風情があってけっこうお気に入りの店が見つかったりして楽しい。

今回は、大井町線の改札から下ったところにある阪急デパート周辺を散策することにしてみた。

サラリーマン達が好みそうな赤提灯を発見。
「円満」とある。
いっちょ験担ぎだ、入店してみる。

先客はお一人様サラリーマンが2人。
メニューには飲兵衛が喜ぶおつまみがずらりと並ぶ立ち飲み屋さん。
100円〜300円とお財布に優しいお値段。

オススメのメニューには「餃子」と「麻婆豆腐」とある。
ママの「お飲物ナンにする?」。
どうやら、中国ご出身らしい。

ニラともやしの炒め物とビールを注文。
シャキシャキしていて美味しい。味付けが本場の中華のよう。

隣のサラリーマンの方が、「ここの麻婆豆腐ほんっと美味しい」を連呼している。気になりすぎる。

「今日は特に辛いね、激辛。いいねえ」

辛党の会長も麻婆豆腐を注文してみることにした。

「お姉さん、辛いの平気そうだから、激辛にしてあげてよ」
とサラリーマンの方の優しさ。

ワクワクして来た。
来たのは今にも飛び出しそうなくらい、良い盛りの麻婆豆腐。
これが250円とは驚きである。

山椒が粒のまま入っており、生姜の味も効いている。
後から痺れてくる辛さがたまらない。気づくとパクパク止まらない。

「ね、これ美味しいから、止まらないでしょ。なんなら、高級中華料理店に引けをとらないよね」とサラリーマンの方。

おっしゃる通り、かなり美味しい。
これは、餃子も美味しいに違いない。
勢いづいて、ホッピーセットと共に追加注文。

届いたのは羽根つきの餃子。テンションが上がる。

パリパリでお肉もぎゅっと入っていて美味しい。
250円でこれは、かなり嬉しい。

む、気になるメニューをもう一つ発見。
「柿ビンって何ですか?」
戸惑うママの代わりに、おじさまが答えてくれる。

「あ、それ柿ピーだと思うよ、他のも、よく間違えて書いてあるから」

こんなところも、ご愛嬌。

結局、メンチカツを注文。150円安い。

夢中でお料理をいただく。
ホッピーの中も、すでに3杯頼んでいた。
気づけば、周りはサラリーマン及び定年退職したであろうおじさまで混み合ってきた。

何やら、後ろの丸テーブルで怪しげな動きをするサラリーマン2人組。
出して来たのは、怪しい白い粉の瓶が大量に入った段ボール箱。

「みなさん、塩分の取りすぎにはお気をつけて。こちらを是非お使いください」

中身はなんと減塩タイプの食卓塩。
赤いものはよく見るが、緑のものは初めてみた。

若手のサラリーマンが減塩タイプの塩瓶をお客さんに配ってくれている。
ありがたく頂戴した。

店のカウンターに目をやると、もらった塩瓶と同じものが置いてある。
「あれ、こちらのお店でも取り扱いされているんですね!」
思わず声を発する。

と、若手のサラリーマン、
「いや、先週、勝手に置かせていただいたんです」
営業魂が半端ない。

「円満」という名の通り、和気藹々とした人の温かさを感じられるお店だ。
美味しい中華料理とお客さんの笑顔。

また次来るのを楽しみに、お店を後にした。

円満
〒140-8515
東京都品川区大井1-24-5 大井町センタービル
03-3778-2767

「緑色の減塩タイプあります。」

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