バスケのお味は、ほろ苦め。

家族とケンカし、彼氏との仲は不穏。
なんだか、ダブルパンチでついていない日。

いてもたってもいられない、焦燥感と悲しみ。

いい年して、泣きべそ書きつつ、恵比寿をトボトボ歩いていた。

はあ。

街を歩く、幸せそうな人々と今の自分を比べて、さらに落ち込む。
悪い考えはループしやすい。

だのに、お腹は減っている・・・・・・。

と、なんだかオシャレな感じのバーを発見。

ここなら、落ち込んでいる私でも静かに飲めるかも。

入店することに。
明るいお兄さんが対応してくれる。

しかし、ここはバー。
食事はほとんど用意がないらしい。

そうかあ。
と残念そうにしていると、実は、近くの餃子バルと仲がよろしいそうで、電話注文すれば宅配してくれるそうな。

餃子、ニラ玉、鶏皮ぽん酢をつまみに、お兄さんオススメのカクテルをちびちび飲む。


落ち込んでても、食欲は健在なのだ。

店の中では、NBAの映像が流れている。
その映像をぼーっと眺めていると、店員のお兄さんから声をかけられる。

「ぜんぜん、分からないですよね・・・・・・。僕、バスケやってるんで、好きだから流しているんです」

へえ。

バスケか・・・・・・。
そういえば、会長も中学2年の時に少しだけ、やっていたな。

プレイヤーが休憩したくなったら、ベンチに座っている人とバトンタッチして、ひたすら試合を続けるっていう、ゆるいクラブ。

でも、メンバーは圧倒的に男子が多く、下手くそな女子の私とバトンタッチしてくれる人が全然いなくて、ずっとベンチ入り。

まあ、いいんだ。見てるのだって、楽しいし。

そう思い込もうとしていた、その時。

悪ガキで有名だったSくんから、一言。
「代わって」

学校内でも有名なスポーツバカに近い男子だ。
絶対、体力だってそんなに消耗していないし、試合だって、ずーっと続けていたかったに違いない。

だのに、その男子が、まさか、ベンチ入りしている下手くその私に声をかけてくれるとは・・・・・・。

退屈そうにしている私に対する、彼なりの優しさだったのだと思う。

でも、思わず発してしまったのは
「いいや」の一言。

突然のことに動揺したのと、彼の代わりには絶対なり得ないという自信のなさから、出た言葉だ。

それを受けて、彼はすぐさま、試合に戻り、プレイを続けていた。

一方の私。
ベンチ入りする日々が続き、クラブもやめてしまった。

もしかしたら30過ぎた今も、あの時と同じで、いいや、の人生が続いているのかもしれない。

そろそろ、「いいや」じゃなくて、「いいよ」にしなきゃな。

なんて、もの想いにふけっていたら、酒は進む進む。


その日、落ち込んでいた理由なんて忘れてしまうくらい、上機嫌で帰路につくのであった。

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「NIKEエアマックス大好きだったなあ。」